基本情報
業種:経営コンサルティング業(中小企業向けの会員制サービス、事業承継・M&A・経営戦略支援など) 規模:年商6億円規模/従業員25名程度 経理体制:経理2名(IPOを視野に入れていた)
きっかけ:当社からの営業活動。前任の経理担当者が産休に入る前の、業務引き継ぎが起点
着手前の状況
引き継ぎの段階で、現場レベルの問題が次々と表面化しました。中身の分からないExcelマクロ、補助科目が活用されていない会計ソフト、貸借対照表の残高を確認する手段がない状態。
より根深かったのは、経理を構造的に理解している人が、社内に一人もいなかったことです。過去の引き継ぎ資料を見ながら「なんとなく」処理を回しているだけで、なぜその作業をしているのかを説明できる人がいない。だから「工数に無駄がある」「時間がかかるから改善したい」という発想自体が生まれない——改善の前段階で止まっていました。当然、監査法人に説明できる状態でもありません。
会員管理(数千件規模)はとりわけブラックボックスで、検証する術がない。担当部署も管理部も定着率が低く、根本を理解している社員がいない状態でした。経営側では、毎月のPL報告は上がるものの、社長自身が管理部長を兼務し、その数字に意味づけやコメントをできる人が他にいない。人の入れ替わりも激しく、経営陣はそこに強い危機感を持っていました。
取り組んだこと
最初に着手したのは、システム導入ではなく、既存業務の解析でした。Excelやマクロを一つずつ見て、「なぜこの作業をしているのか」という必要性から確認する。作業をそのまま引き継ぐのではなく、目的に立ち返って代替案を考え、フォーマットを変え、ミスの低減と効率化の余地を探りました。
そのうえで会計ソフトを入れ替え、手入力に依存しない処理フローを構築。適切な連携フォーマットや管理会計用の流し込みフォーマットを用意することで手入力を減らし、結果としてミスも減らしました。補助科目を整備して債権債務を会計上で可視化し、会員数が多い会員管理は基幹システムに役割を持たせるなど、どの情報をどのシステムが持つかの役割分担を明確にしました。
ブラックボックスだった会員管理は、未入金・入会・退会・加入金といったBtoB会員ビジネス特有の煩雑な動きを、会計・基幹システム・実入金と突き合わせて可視化。現状が検証できる状態にしました。
そして、構造を理解できる人がいない会社だからこそ、仕組みを社内に残すことに注力しました。Excel管理はフォーマットを共有し、自身が過去に作ったデータをそのまま渡す。会計上の考え方や思想、経営者が見たい数字を繰り返し共有し、作業の代行で終わらせない形を目指しました。
結果
月次処理の工数を、従来の約4分の1に削減。 社長が兼務していた管理部長業務から手を離せるようになった。その後、管理部長は採用に至りましたが、在任者が交代しても数字周りは滞りなく引き継げる状態を維持しています。人が替わっても回る——属人化からの脱却が、実際に機能しています。 開示資料の作成も支援し、着手前には考えられなかった水準で、部門損益やセグメント情報まで整理できるようになりました。IPOを見据えた管理体制の高度化を、現在も継続して支援しています。
現在
本案件は、付き合いが8年目に入り、現在も継続中です。長い関与のなかで蓄積した会社固有のナレッジは、社内の誰よりも厚い状態になっています。
