• 業種:オーガニック・自然食品の輸入販売(ECモール・自社EC・卸売)
  • 規模:小規模な輸入販売事業者
  • 経理体制(着手前):社内に経理担当者がおらず、輸入・EC・卸売が混在する取引の記録や証憑管理のルールが定まっていない状態。数字の全体像が経営者からも見えづらくなっていました。
  • きっかけ:輸入・EC・卸が入り混じる経理を社内で担いきれず、月次の経理全般について相談を受けたこと。

この会社は、海外から仕入れたオーガニック・自然食品を、ECモールや自社サイト、卸売を通じて販売する、小規模な輸入販売事業者でした。酵素をはじめとする商材そのものには確かな良さがありましたが、その裏側では、経理が社内でうまく回っていませんでした。

取引の構造が、そもそも複雑です。海外からの仕入れには外貨建ての送金や輸入物流費が絡み、ECモールでの販売には手数料や配送費、後払い決済の消込がついて回ります。そこに卸売も加わり、輸入・EC・卸が混在する費用構造を、整理して記録する仕組みがありませんでした。証憑や請求書をどう分類し、どう保管するかのルールも定まっていません。数字の全体像が、経営者からも見えづらくなっていたのです。

入り口は、月次の経理そのものを自ら引き受けることでした。外部の立場でありながら、あえて現場の数字に深く入り込む——それは、事業の実態を誰よりも正確につかむための、意図した入り方です。外貨建ての海外送金や輸入物流費を原価まで含めて正しく計上し、ECモールの手数料・配送費・後払い決済の入金消込を突き合わせ、複数の銀行口座を照合する。輸入・EC・卸が入り混じった取引を、毎月きちんと整えていきました。この積み重ねを6期にわたって続けたことが、のちの大きな価値になりました。

毎月、現場の数字に触れ続けると、財務諸表の数字の「裏側」が見えてきます。チャネルごとの収益性がはっきりしないこと。ECの手数料や配送費が重く、表面的な売上と実際の粗利が乖離していること。海外への送金と国内の入金にズレがあり、為替と運転資金の管理が欠かせないこと。こうした実態を、月次の数字から一つずつつかんでいきました。

そして、数字から見えた課題を、経営者との対話に持ち込みました。売上が一部の一過性の大口購入(転売目的とみられるものも含みます)に依存しがちで、良い商材と販売チャネルがうまく噛み合っていない。そこに気づき、ただECモールに出す・自社ページを作るだけでなく、集客のためのSEOやブランディング、BtoCとしての売り方そのものについて、経営者と複数回にわたって話し合いました。改善の案を出し、ヒアリングを重ねるなかで、「何を、どこで、どう売るか」への経営者の意識を、少しずつ見直していただくことに寄与できたと考えています。

  • 輸入・EC・卸売が混在する複合的な取引の月次経理を、6期にわたって正確に回しました。
  • 外貨建ての海外送金や輸入物流費を、原価まで含めて適切に計上する体制を整えました。
  • ECモールの手数料や配送費を織り込み、表面的な売上ではなく粗利ベースで数字を見る土台をつくりました。
  • 月次の経理から見えた「チャネル・顧客への依存」という課題を経営者に提起し、売り方を見直す対話につなげました。
  • 数字を預かる立場から一歩踏み込み、経営者の意識をチャネル戦略の再考へと動かすことに寄与しました。

約6年にわたる支援を経て、一区切りを迎えました。日々、経理の現場に自ら入り込んだからこそ、数字の背景にある取引構造やお金の流れを深く理解でき、その理解が「売り方をどう見直すか」という経営の対話にまでつながりました。数字の実務を入り口にしながら、そこにとどまらない——そんな伴走のかたちを示す案件です。