基本情報
- 業種:建設業(内装・建築工事。複数の大手ゼネコンを主要元請とする下請会社)
- 規模:工事担当者 8〜9名
- 経理体制(着手前):経理担当者が不在。会計処理は行われていたものの、毎月の数字が経営者の手元に届かず、経営判断に使える状態になっていませんでした。
- きっかけ:紹介
着手前の状況
この会社は、複数の大手ゼネコンを元請とする内装工事の下請として、工事担当者8〜9名がそれぞれ自分の案件を動かしていました。仕事は回っていましたが、「どの工事で、誰が、いくら稼いでいるのか」を経営者がつかむ手段がありませんでした。
建設業には、工事が完成するまで売上が立たないという特有の難しさがあります。期末に仕掛中の工事をどう評価するかを誤ると、決算の利益が大きく狂います。にもかかわらず、担当者別・工事別に原価を追う仕組みがなく、収益性は見えないままでした。
資金の面も読みづらい状況でした。元請からの支払いは手形や保留金が中心で、いつ・いくら入ってくるのかの見通しが立てにくい。さらに取引銀行は3行にまたがり、口座ごとの資金が一元管理されていませんでした。
そして経理担当者が社内にいないため、毎月の数字そのものが経営者に届かない。事業は動いているのに、足元の利益と資金が見えない状態でした。
取り組んだこと
最初に手をつけたのは、新しいシステムの導入ではありませんでした。会計ソフトはすでに原価計算に対応したものが入っており、入れ替える必要はありませんでした。足りていなかったのは、そのソフトを使って「毎月の数字が経営者に届く」状態にするための、マスタの整備と運用の設計でした。そこを外部から立ち上げたうえで、管理会計の整備と資金繰りへの伴走を、両輪として進めました。
月次の経理・決算サイクルを外から回す
3行の口座照合、現金出納帳の整備、月次決算の締めまでを外部の立場で構築し、毎月決まったリズムで数字が出る状態をつくりました。
担当者別・工事別に原価を見えるようにする
工事担当者8〜9名全員について、工事別の原価率表を整備しました。月次で「誰の、どの工事が、何%の原価で進んでいるか」が一覧で見えるようにし、受注の選別や担当者ごとのマネジメントに数字を使えるようにしました。
入金の読めない部分を一元管理する
受取手形の期日・金額を一覧で管理し、元請ごとの入金元帳と保留金の管理表を整備しました。手形・保留金という「読みづらいお金」を可視化したうえで、顧客別の売掛金残高・支払サイクル・買掛金残高を整理し、入金と出金をトータルで把握できるようにしました。
シビアな資金繰りに、判断の段階から伴走する
この会社の資金繰りは厳しい局面が多く、資金の手当てや手形の扱いといった重い判断は、最終的には社長自身が下していました。当社がそのすべてを担ったわけではありませんが、論点の整理や見通しの数字づくりを通じて、社長が判断を下す場面に一緒に向き合いました。表をつくって終わりにするのではなく、数字を使って一緒に考える役割まで踏み込みました。
仕掛工事を正しく評価する
担当者別・工事別の仕掛工事リストを作成し、全社のマスターに統合しました。期末に残っている工事を適正に評価し、利益を正しく算出できる体制を整えました。
経営と個人のお金を分け、統制の土台をつくる
社長個人にひもづく経費を分離して管理し、経費精算のルールを標準化しました。内部統制の基盤を整えました。
結果
- 工事担当者8〜9名全員の工事別原価率を毎月可視化し、受注の選別や人材マネジメントに使える状態にしました。
- 手形・保留金・3行の口座を含めた資金繰り管理の体制を整え、資金ショートのリスクを定量的に把握できるようにしました。
- 仕掛工事の担当者別の棚卸体制を確立し、期末の適正な利益計算ができるようになりました。
- 経理担当者が不在のまま、「毎月、経営者の手に数字が届く」体制を外部から約2年間継続して回しました。
現在
約2年間の支援を経て、経営体制が次の段階へ移るタイミングに合わせて、構築した管理会計と資金繰り管理の仕組みを引き継ぎ、一定の役割を終えました。
外部の立場で立ち上げた体制ではありましたが、その中身は特定の個人に依存するノウハウではなく、工事別原価率表・手形や保留金の管理表・月次決算のサイクルといった「形に残る仕組み」でした。だからこそ、経営体制が変わる局面でも、数字が見える前提を残したまま次の担い手へ引き継ぐことができました。
資金繰りについても、関与の終盤には社内の事務担当者が、当社のものとは異なる独自の形で日次の資金繰り表を作り、回せる状態になっていました。当社のひな形をそのまま使い続けるのではなく、社内の手で日々の資金が見える運用が根づいたことが、引き継ぎの何よりの土台になりました。本件は、引き継ぎをもって支援を完了しています。
