基本情報
- 業種:建設業
(グループ会社で不動産の売買・賃貸管理を行い、支援先はアパートの企画・施工を担う建設会社) - 規模:年商4億円規模/従業員3名(グループ全体 約20名)
- 経理体制(着手前):グループ全体の経理を2名(正社員1名・派遣社員1名)で兼務。会計ソフト以外はほぼExcelで管理し、発生主義の概念がなく現金主義で処理。現場と経理が似た資料をそれぞれ作成し、二重・三重管理が常態化していた。物件ごとの予算・実収支・工程管理は手つかずの状態。
- きっかけ:複数の法人が絡む建設案件が同時並行で拡大するなかで、物件ごとの原価も支払いの根拠も追えなくなり、支払トラブルのリスクが表面化したこと。
着手前の状況
アパートの企画・施工を担うこの会社は、グループで複数の案件を同時に抱えていたが、物件ごとの原価がまったく把握できていなかった。
発注や支払いのエビデンスを管理する統一ルールがなく、「支払ったかどうか」「いくらの見積もりで発注したのか」を後から追える仕組みがない。会計ソフト以外はほぼすべてExcelで管理され、現場と経理がよく似た資料をそれぞれ作るため、同じ情報が二重・三重に存在していた。
会計処理は現金主義で、月次の損益は見えない。試算表を開いても、勘定科目と工事項目が紐づいていないため、どの工事にいくらかかっているのかを経営者が読み取る手段がなかった。
経理担当の2名は日々の業務に追われており、「どこから手をつけるべきか」という判断自体が難しい状況だった。
取り組んだこと
最初に着手したのは、システムの導入ではなく、「何を先に整えるか」の優先順位づけだった。
複数の法人・複数の案件が絡み合った経理の実態をまず診断し、グループ全体を一度に変えようとするのではなく、「建設事業の物件管理を先行して整備する」と決めた。経理2名の業務負荷を踏まえ、無理のない段階で進められるよう、整備の順序を設計したうえで着手している。
物件ごとに原価が見える仕組みをつくる
同時に走る17物件以上について、物件単位の実行予算・工事台帳・収支管理を整備した。土地取得から建設費、諸経費までを含めた収支を、物件ごとに把握できる状態にした。
支払いの根拠が必ず残る運用にする
見積書・契約書・請求書・完了報告書がそろわなければ支払いを行わない、というルールを定めた。物件コードと工事項目番号を全書類で統一して採番し、見積もりから請求まで一本の線でたどれるようにした。条件が変わったときの覚書の取得や、支払済みの管理まで含めて、運用が定着するまで伴走した。
書類とお金の流れを図にする
受注から発注、予算策定までの流れを整理し、関係者のあいだで書類と資金がどう動くかを可視化した。現場の担当者でも守れる手順に落とし込んだ。
試算表と現場をつなぐ
仮設・基礎・大工・外壁・電気・屋根など、現場の工事工程を大・中・小の区分で整理し、会計上の勘定科目と対応づけた。これにより、試算表の数字と現場でかかっている原価が一致して読めるようになった。
経営会議で使える資料に仕上げる
物件ごとの進捗・着工日・竣工予定などを一覧でグラフ化し、経営陣が会議の場で現場の状況を見ながら判断できる報告体制を整えた。
結果
- 同時進行する17物件以上の全案件で、物件単位での収支把握が可能になった。
- 見積・発注・請求を一貫して管理する運用により、過払い・未払いの発生件数が減少した。
- 支払いの4点セット(バウチャーパッケージ)がそろわなければ支払えないルールを定着させ、支払トラブルのリスクを構造的に抑え込んだ。
- 勘定科目と工事項目を40項目以上で対応づけ、試算表から現場原価が読み取れる状態にした。
- 現金主義から発生主義へ切り替え、月次で損益を把握できる土台を整えた。
- 現場と経理それぞれで作られていた二重・三重の管理資料を洗い出し、整理した。
- 経営会議向けの報告資料により、経営陣が会議の場で現場を把握し、判断できる体制を実現した。
将来的に工事進行基準へ移行する場合にも耐えうる管理の骨格を、この段階で設計しておいた。
本事例は過去の一事例であり、同様の成果をお約束するものではありません。
