基本情報
- 業種:食品卸売業(給食向け卸を主軸に、直営店舗・水産事業を展開)
- 規模:年商18億円規模/従業員約70名(正社員約20名・パート約50名)。創業から半世紀を超える老舗企業
- 経理体制(着手前):管理部門の責任者は社長が兼務。消費税は税込方式のまま運用され、月次の数字が経営判断に使える精度に達していない状態。決算書と申告書のあいだにも数値の不整合が積み重なっていました。
- きっかけ:経営企画領域の組織改革プロジェクトの立ち上げに合わせて、管理部門の現状把握から伴走を開始したこと。
着手前の状況
創業から半世紀を超え、年商18億円規模まで事業を築いてきた食品卸企業。しかし、その規模に対して、管理部門は追いついていませんでした。長く管理部門を担ってきた役員が決算期のタイミングで退任し、社長が責任者を兼務して引き継いだ直後——専任の管理部門長が不在のまま、数字は「税務申告のため」には作られていても、「経営判断のため」には作られていない状態でした。
管理の足腰の弱さは、日々の実務にも表れていました。納税をはじめとする基本的な税務事務にも漏れが生じうる運用で、金融機関から資料を求められても、すぐに応えられる体制がありません。実際に、直近3期分の決算書と申告書を確認してみると、売上高・棚卸資産・減価償却費・法人税等の各所で数値の不整合が見つかりました。根本の原因は、消費税が税込方式のまま処理され、月次の数字の精度がそもそも経営に使えるレベルに達していなかったことです。過年度の誤計上や未計上も残っており、「帳簿の数字をどこまで信じてよいか」から確かめる必要がありました。
取り組んだこと
最初に行ったのは、直すことではなく、測ることでした。経理・人事労務・システムの各領域を並行してヒアリングし、直近3期分の決算書と申告書を全科目で照合。どこに、どれだけのズレがあり、なぜ生まれたのかを可視化しました。そのうえで、経理体制の構築課題を39項目のチェックリストに体系化し、「今すぐ着手すべき26項目」から優先順位をつけて実行計画に落とし込みました。
決算は、可視化で終わらせていません。直近期の決算整理では、過年度に誤計上されていた売掛金や、未計上だった費用・除却損を特定して是正し、給与の期末未払分を追加計上して発生主義を徹底。申告まで完了させ、「信じられる決算書」への是正を実行に移しました。
会計ソフトの刷新や決算期の変更といった大きな論点についても、選択肢とメリット・デメリットを整理し、経営者が判断できる材料として提示しています。
そして、この案件の特徴は、経理の外側まで踏み込んでいることです。経営理念・行動規範の策定を支援し、主任クラス以上12名への浸透インタビューを実施。他の外部アドバイザーとも協働しながら、管理職向けの「予算管理研修」「財務三表研修」を新規開発して実施しました。管理部門の新設を含む組織再編にも関わり、数字の是正と、数字を使える組織づくりを並行して進めています。
結果
- 直近3期分の決算書・申告書を全科目で照合し、数千万円規模の数値不整合を特定・可視化しました。
- 直近期の決算整理で、過年度の誤計上・未計上を是正し、発生主義に基づく決算として申告まで完了しました。
- 納税をはじめとする基本的な税務事務が、漏れなく回る運用に整いました。
- 金融機関から求められる資料を、自社で作成して提出できる状態になりました。
- 経理体制の構築課題を39項目に体系化し、優先順位つきの実行計画に落とし込みました。
- 管理職向けの研修(予算管理・財務三表)を開発・実施し、数字を読める管理職層の育成に着手しました。
- 経営理念・行動規範の策定と、管理部門新設を含む組織再編に関与しました。
現在
支援開始から約1年半、現在も継続中です。決算の是正という「過去の整理」から始まった支援は、いま、月次の精度向上と、数字を使える組織づくりという「これから」のフェーズに移っています。
年商18億円の規模でも、管理部門は一朝一夕には変わりません。できたこと、まだ結論が出ていないこと——その両方と向き合いながら、経営者のすぐ隣で立て直しを続けている案件です。
